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全社AIとは?機密はローカル、他はクラウドで会社全体にAIを広げる方法

2026.10.19

社内の全てのデータとAIをつなげたい経営者へ。全社AIとは、機密業務はローカルAI、それ以外はクラウドAIで処理し、会社全体として使えるようにしたAIのことです。AIが一部の部署で止まる理由と、つくり方4ステップ、保険代理店での導入事例を解説します。

ChatGPTを会社に入れてみたものの、使っているのは一部の社員だけ。そんな会社は少なくありません。

理由ははっきりしています。会社で一番時間がかかる仕事ほど、顧客情報や決算の数字のように「社外に出したくないデータ」を扱っているからです。クラウドのAIにそのデータを入れるのは怖い。だから肝心の業務にはAIが使われず、AIは「調べものと文章づくりの道具」で止まってしまいます。

この記事では、その壁を越えて会社全体でAIを使うための考え方「全社AI」を解説します。

  • 全社AIとは何か、ChatGPTを全社員に配るのと何が違うのか

  • ローカルAIとクラウドAIの使い分けの基準

  • 全社AIのつくり方4ステップと、保険代理店での導入事例

書いたのは、これまで数十社にAIを導入してきた株式会社PLATINUM INTERACTION 代表取締役の佐藤圭達です。

この記事の結論

  • 全社AIとは、機密業務はローカルAI、それ以外はクラウドAIで処理し、会社全体として使えるようにしたAIのことです。

  • クラウドAIだけでは機密データを扱う業務に使えず、AIの活用は「一部の部署・一部の業務」で止まります。

  • つくり方は「業務の仕分け → ローカルAIの設置 → 振り分けと匿名化の仕組み → 人の承認とルール化」の4ステップです。

目次

  1. 全社AIとは?

  2. なぜ多くの会社のAIは「一部の部署」で止まるのか

  3. 全社AIと「ChatGPTを全社員に配る」の違い

  4. ローカルAIとクラウドAIの使い分けの基準

  5. 全社AIのつくり方4ステップ

  6. 導入事例:大分県の保険代理店

  7. 全社AIの費用の目安

  8. 全社AIを入れなくてもよい会社

  9. よくある質問

  10. まとめ

  11. この記事を書いた人

全社AIとは?

全社AIとは、機密業務はローカルAI、それ以外はクラウドAIで処理し、会社全体として使えるようにしたAIのことです。

  • ローカルAI:会社の中に置いた機械の中で動くAI。データが社外のサーバーに送られません

  • クラウドAI:ChatGPTやClaudeのように、インターネットの向こうのサーバーで動くAI。賢くて便利ですが、入力したデータは社外に出ます

全社AIの仕組み:機密に触れる業務は社内のローカルAI、それ以外は社外のクラウドAIで処理する

全社AIの「全社」は、社員1人ひとりがAIを道具として使う状態ではなく、会社のあらゆるデータと業務にAIがつながっている状態を指します。そのために、扱うデータの種類によってローカルとクラウドを使い分けます。

なぜ多くの会社のAIは「一部の部署」で止まるのか

一番時間がかかる仕事ほど、機密データを扱っている

佐藤自身、全社AIにたどり着いたきっかけは自社の経理でした。

「過去の入出金の記録や決算の情報をAIに読み込ませて、経理のAIを作ろうと思ったんです。でも、自分の会社のデータをクラウドに読み込ませるのは抵抗がありました。情報漏洩のリスクがあると思ったからです」(佐藤)

保険代理店の顧客管理でも同じ壁にぶつかりました。保険業界が扱うのは、お客様の年収、資産、健康状態といった、とくに秘密性の高い情報です。

「クラウドAIは、LPの作成やメールの送信、資料づくりにはとても便利です。でも機密情報は読み込ませられないので、そこに関わる業務はAIでできない状況になっていました」(佐藤)

多くの会社でAIが一部の部署で止まっている理由の一つも、ここにあります。顧客データのような機密情報をAIに渡せないため、会社全体での活用まで進まないのです。

AI導入の5段階で見ると「段階2」で止まっている

佐藤が受講した松尾研究所のAXエバンジェリスト講座では、企業のAI活用(AX)を5つの段階で整理しています。

  1. 生成AIの導入:社員がChatGPTなどを使い、社内の利用ルールを作る

  2. データの連携・統合:社内のデータをAIにつなぎ、社内の情報を踏まえて答えたり作業したりできるようにする

  3. 業務プロセスの刷新:AIを前提に、業務の流れそのものを作り変える

  4. 独自AIの開発:競争力の源泉として、自社固有のAIを開発する

  5. 業界AIの開発:業界全体で使える基盤のAIを作り、取引先も含めて広げる

企業のAI活用(AX)5つの段階:多くの企業はAX1で止まり、AX2のデータ連携で壁にぶつかる

「多くの企業は段階1までは進んでいますが、段階2で止まっていると思います。機密情報を含むデータがあると、どうしてもAIとの接続がやりにくいからです。私たちは、この段階2で、社内の全てのデータとAIをしっかり接続するところをやっています」(佐藤)

全社AIは、この「段階2の壁」を越えるための考え方です。

全社AIと「ChatGPTを全社員に配る」の違い

  • クラウドAIだけ(ChatGPTを全社員に配る):導入は手軽。ただし機密データを扱う業務には使えず、活用は調べものや文章づくりに偏る

  • 社内サーバーのAIだけ:データは外に出ない。ただしクラウドAIほど賢くなく、ネット上の情報も使いにくい。大企業向けで高額になりやすい

  • 全社AI:機密データはローカルAIで処理し、それ以外はクラウドAIの賢さを使う。安全と便利を両立し、会社のほぼ全ての業務でAIを使える

全社AIとクラウドAIだけ・社内サーバーのAIだけの比較表

「機密情報はローカルAI、それ以外はクラウドAI、と使い分ければ、安全と便利を両立できると思いました」(佐藤)

ローカルAIとクラウドAIの使い分けの基準

線引きの基準は「機密情報に触れるかどうか」です。

「面談記録や顧客情報のように機密情報に触れるものは、基本的にローカルで処理します。そのあとクラウドAIが必要になったら、匿名化した状態で渡す。この線引きをしています」(佐藤)

  • ローカルAIで処理する仕事:顧客情報、面談記録、契約内容、帳簿・決算、人事情報など

  • クラウドAIで処理する仕事:調べもの、レポートづくり、LPやWebページの作成、問い合わせフォームの送信、一般的な資料づくりなど

  • 両方を組み合わせる仕事:顧客向けの提案資料など。ローカルAIが顧客情報を読み、名前などを伏せてからクラウドAIに渡す

ローカルAIの性能も、いまは実用の水準に来ています。当社がメモリ16GBのMacBook Proで日本語のローカルAI 6種類を試したところ、面談メモの要約は速いもので約5〜9秒で終わりました(当社調べ、2026年10月)。詳しくは「ローカルLLMのおすすめ」の記事で紹介しています。

全社AIのつくり方4ステップ

全社AIのつくり方4ステップ:業務の仕分け、ローカルAIの設置、振り分けと匿名化、人の承認とルール化

ステップ1:業務を「機密」と「機密以外」に仕分ける

まず、自社の業務を書き出します。頭の中で思い浮かべるだけでも構いません。そのうえで、顧客情報などの機密データを扱う業務と、扱わない業務に分けます。

「経営者が明日やるべき最初の一歩は、自分の業務をざっと書き出して、機密データを扱う部分と扱わない部分を分けることです」(佐藤)

ステップ2:機密の業務のために、ローカルAIを置く

機密の業務は、社内に置いた機械の中で動くローカルAIで処理します。顧客情報もその機械の中に保存し、外部のサーバーに置かないようにします。

ステップ3:振り分けと匿名化の仕組みを入れる

社員が毎回「これはローカル、これはクラウド」と判断するのは現実的ではありません。そこで、AIへの窓口を1つにし、依頼を受けたローカルAIが振り分けます。

「たとえば『高橋さんの資料を作って』とクラウドAIに頼むと、お客様の名前が社外に出てしまいます。だから受け取りは基本的にローカルAIにして、ローカルAIが高橋さんの情報を見に行き、名前などを伏せた状態でクラウドAIに渡して資料を作ります」(佐藤)

顧客の名前を社外に出さずにクラウドAIで資料を作る流れ

クラウドAIに渡す前に、名前や電話番号らしきものが残っていないかを確認し、外に出した内容は記録に残しておくと安心です。

ステップ4:最後は人が承認し、社内のルールにする

AIが作ったものを、そのまま反映させないことも大切です。

「ローカルAIが全部作ってしまうと、意図しない内容が反映される可能性もあります。だから必ず人が承認してから反映する形にしています」(佐藤)

どの業務をどちらのAIで処理するかを社内のルールとして決めておけば、一部の社員だけでなく、会社全体でAIを使えるようになります。

導入事例:大分県の保険代理店

佐藤は、大分県の生命保険代理店にローカルAIとクラウドAIを組み合わせた仕組み「保険BOX」を導入しました。

導入事例:毎日1時間の記録づくりが、1分話すだけになった

導入前:営業後の疲れた体で、毎日1時間の記録づくり

保険代理店は、お客様との面談ごとに募集の記録や証跡を残す必要があります。金融業界のため外部からの調査もあり、記録は毎日きちんと作らなければなりません。

「毎日1時間ほど、事務所で募集の記録や日報をパソコンに打ち込んだり、紙に書き起こしたりしていました。営業が終わってすごく疲れている中で1時間かけるのは、本当に苦しかったです」(大分県・生命保険代理店 代表)

導入後:1分話すだけで、帳票の下書きまで自動で

いまは面談のあと、スマホかパソコンに1分ほど面談の内容を話すだけです。

  • 話した内容から、募集の記録・証跡と、意向把握帳票の下書きまでが自動で作られる

  • 担当者は内容を確認して承認するだけ

  • いまでは基本的に全てのお客様について、記録と帳票を作成できている

保険BOXの構成

  • ローカルAI:顧客情報を扱う業務は全てローカルAIで処理。日報の振り分け、意向把握帳票や提案の記録の下書きを、ローカルAI(Gemma 4 12B)が作る

  • クラウドAI:顧客情報を含まない仕事(調べもの、レポート、LP作成、問い合わせフォームの送信など)は、これまでどおりクラウドAIを使う

  • 両方を組み合わせる仕事:顧客向けの資料は、ローカルAIが匿名化してからクラウドAIに渡して作る

全社AIの費用の目安

全社AIの費用は、ローカルAIを動かす機械、クラウドAIの利用料、仕組みづくりと運用の手間で決まります。

保険代理店向けの「保険BOX」の場合は、月3万円から導入できます。詳しい費用は、全社AI導入ガイドで紹介しています。

全社AIを入れなくてもよい会社

「入れない方がいいというより、入れなくてもいい会社はあります。機密情報をほとんど使わない会社です」(佐藤)

扱う情報のほとんどが公開情報であれば、クラウドAIだけで十分です。反対に、顧客情報や社外秘のデータを日常的に扱う会社ほど、全社AIの効果は大きくなります。

よくある質問

Q. 全社AIとは何ですか?

A. 機密業務はローカルAI、それ以外はクラウドAIで処理し、会社全体として使えるようにしたAIのことです。

Q. ChatGPTの法人プランだけではだめですか?

A. 顧客情報や決算のような機密データを扱わない業務なら十分です。ただ、機密データを扱う業務にはAIを使いにくいため、活用が一部の部署で止まりやすくなります。

Q. ローカルAIの性能は実用的ですか?

A. 帳票の下書きや要約のような決まった作業なら実用的です。当社のテストでは、メモリ16GBのMacBook Proでも、速いモデルなら面談メモの要約が5〜9秒ほどで終わりました。複雑な判断や長い文章の設計は、クラウドAIの方が得意です。

Q. 顧客の名前が入った資料もAIで作れますか?

A. 作れます。ローカルAIが名前などを伏せてからクラウドAIに渡し、できあがった資料に社内で名前を戻します。

Q. 何から始めればいいですか?

A. 自社の業務を書き出し、機密データを扱う業務と扱わない業務に分けるところから始めてください。扱わない業務は、今日からクラウドAIで始められます。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

A. 規模や業務によって変わります。保険代理店向けの保険BOXは月3万円から導入できます。

まとめ

全社AIとは、機密業務はローカルAI、それ以外はクラウドAIで処理し、会社全体として使えるようにしたAIのことです。

AIが一部の部署で止まっている会社の多くは、機密データの壁にぶつかっています。業務を「機密」と「機密以外」に分け、それぞれに合ったAIを使えば、安全と便利を両立しながら会社全体にAIを広げられます。

まずは自社の業務を書き出すところから始めてみてください。

この記事を書いた人

佐藤圭達(さとう けいたつ)株式会社PLATINUM INTERACTION 代表取締役・松尾研究所 AXエバンジェリスト

「多くの会社のAIは、機密データの壁の手前で止まっています。社内の全てのデータとAIをつなぎ、会社全体でAIを使える状態をつくる。それが私たちの仕事です」

この記事の作り方:考え方と事例は佐藤圭達への取材(2026年10月12日)、ローカルAIの性能は当社の実機テスト(2026年10月、MacBook Pro(Apple M5)・メモリ16GB、6モデル×144回)に基づいています。

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